行き場の無い患者さん[2007年07月14日(土)]

日本とイギリスのホスピスの違いは何かと聞かれたら、一番大きな違いは患者さんのホスピスの滞在日数の長さだと思う。
1ヶ月以上ホスピスに滞在する患者さんはあまりいないので、2週間ホリデーを取って仕事に復帰してみたら患者さんが入れ替わっていて、知らない患者さんばかりということもよくある。

イギリスのホスピス・緩和ケア病棟のほとんどが在院日数を2週間をめどにしている。
(亡くなる間際の2週間だけ、という意味ではないので誤解の無いように・・・。)
患者さんの状態が悪くなったり、症状がうまくコントロールできていなければ、即入院となる。ベットの空き具合、ベット待ちの患者さんたちの状態にあわせ、週末をのぞく毎日看護師と医師でミーティングをして入院を決めていく。
緊急の依頼の場合で空きベットがあれば、日勤帯で即日入院も受け入れている。

ホスピスはあくまで緩和ケアのためのユニットであって、長期療養型ユニットではない。
2週間を目標に症状コントロール、退院後の在宅ケアの設定または長期療養型のユニット(Nursing Home)などへの転院の手続きをするのだ。
しかし、患者さんの状態は日々変わるし、Nursing Homeのベットの空き状況により、入院が長引くことはよくあること。
もちろん、退院しても状態が悪くなったら再入院となる。

過去の記事も参考にどうぞ・・・
ホスピスの滞在期間
ホスピスのベットは誰のもの


ホスピスに5ヶ月以上滞在している患者さん(メリー:仮名)がいる
状態も安定しているので、メリーは家に帰りたがっていた。
しかし、家族は家では看れないという。
メリーの家には娘夫婦が住んでおり、退院してもメリーの居場所は無いという。(この家はマリーの持ち家であり、娘夫婦の家ではない)

それではNursing Homeへ転院方向だが、家族はNursing Homeの費用は出せないと言い張る。
ホスピスに滞在している限り、マリーのケアにかかるすべての費用は無料なのだ。

イギリスでは医師により余命12週間と診断され、そして審査を通ると在宅ケアやNursing Homeの入院費のための特別な費用が支給される。(通称12 Weeks Funding)
メリーのために何度かこの12 Weeks Fundingを申請したが、状態が落ち着いているために余命12週という診断を受け入れてもらえず、Fundingを取得できないでいた。

家にも帰れない、Nursing Homeにもいけない、家族やソーシャルサービスと何度もミーティングをするが、話は平行線。

すでにマリーが入院してからかかった費用は日本円にして1千万円を軽く越えてしまった。
ホスピスにとっては大打撃でもあり、この間にホスピスのベットを待ちながら死を迎えてしまった患者さんたちもいる。

挙句に家族は
「マリーをホスピスから転院させて、状態が悪くなって死ぬようなことがあったら裁判に持ち込んでやる」
と脅迫めいた事を言い出す始末・・・。
(もちろん家族は、マリーの病気は悪性疾患なので近い将来状態が悪化し死を迎えるのは避けられないことだと知っている。)

マリー本人は自分の家に帰りたいとの自分の希望もかなえられず、ホスピスが長期療養型のユニットではないことも知っているので、自分の行き場所が無いことを悲しそうに話すこともある。

ホスピスも行き場の無いマリーを追い出すことはしない。
この先何ヶ月もマリーはホスピスにいるだろう。

Posted at 06:27 | Palliative care(U.K) | この記事のURL | Clip!! | コメント(6)

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コメント

ドキドキ大Hanaさん
トラックバック、ありがとうございます。
こちらからもさせていただきますね

Posted by:H i  at 2007年07月20日(金) 04:05

Hiさんの記事、私のBlogで紹介させていただきました。
オーストラリアでのナーシングホーム、ホステルの費用のお話、TBさせていただきました。

Posted by:Hana  at 2007年07月19日(木) 16:38

ドキドキ大takakoさん
ホスピスは病院やNursing Homeに比べて快適なので退院・転院したがらない患者さんでいっぱいです・・・。
「癌なのになんで最期まで看てくれないんだ」と言われることもあります
ホスピスや緩和ケア病棟は癌の患者さんすべてを受け入れるのではなく、緩和ケアが必要な患者さんを受け入れる、べきだと思います。難しいですけどね・・・。
そうでないとベット待ちでなくなってしまう患者さんがあとを絶たないと思います。

ドキドキ大Missyさん
カナダはずいぶん違うのですね。こちらからトラックバックさせてもらいました
イギリスではホスピスと呼んでいますが、緩和ケアユニットとホスピスの区別はほとんどありません。
地域ではGP(かかりつけ医)訪問看護師、マクミランナース(癌専門看護師)との連携、病院との緩和ケアチームとの連携ができています

また余命12週間以内という12Weeks Fundingが下りれば、財政的に患者さんをサポートすることが容易になるので、Nursing Homeへの転院も家族の財政負担無しで可能になります。在宅になった場合も一日4回のケアや夜間のケアなど多くのケアをつぎ込むことも可能になります。
この12Weeks fundingが無ければホスピスの在院日数は非常に長くなってしまうと思います

ドキドキ大Hanaさん
オーストラリアも似ている感じですね。
今も2人緩和ケア適応で無い患者さんと家族がNursing Homeへの転院を渋って渋って・・・大変です。
転院を勧める私たちは悪者のよう・・・。
気が重いです。

Posted by:H i  at 2007年07月18日(水) 05:12

オーストラリアの事情も似てます。
PCUと呼ぼうが、ホスピスと呼ぼうが、二週間が目処で、長期滞在のための場所ではないというところ…
こちらは多分イギリスよりも強行にNursing Homeへの移動を進めますが、システムを知り尽くしている患者さん、家族は多く、強行にNoと言い続けるのではなく、Yesと言いつつ、だらだらと、そのうち状態が変化して中断、改善して又一から繰り返し…、私たちは手玉に取られているような気がすることが多いです。

Posted by:Hana  at 2007年07月17日(火) 23:41

同じ時に同じ内容(問題は逆方向だけど)で書かれていたので、トラックバックなるものをしようと思ったけれど、やり方がわからない、、、ギブアップしてしまいました落ち込み

2週間が目途ですか、、短いですね。PCUとの関係はどうなっているのですか?興味深いです。私の地区でも、違うRegionでPCUがないところは日数が短くなっています。うちはPCUがあるので、ホスピスは長期療養型ユニットになります。といっても21日が平均ですが。

マリーさん家族とシステムの間で翻弄されてかわいそうですね。システムを利用しようとする人たちって本当にずるがしこいと言うかなんと言うか、、。こういう時自分は善良で普通の市民なのだと妙に感じてしまいます。

Posted by:missy  at 2007年07月16日(月) 06:01

そんな問題になるのですね。
私の回復期リハビリ病棟も、全く同じ状態です。
お金の問題、介護の問題・・・・・・・・・
そうして、病院はそんな方々ばかりになってしまうのかも。
常にそんな誰かが入院中です。
緩和ケア病棟になったら、ますます増えるかもしれません。
生活保護の方は、医療費もかからず、私達の病院は個室でも差額料金を
とりません。
快適すぎますから、退院しないでしょう。
どこでも同じ問題につきあたりますね。
参考になりますわ。

Posted by:takako  at 2007年07月15日(日) 21:58

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